短歌を作ってみました。

広島出身、関西在住です。よろしくお願いします。

赤猪子(あかいこ)

赤猪子が
御召しを待った八十年
乙女心の純真哀れ

 

 

 英雄的な君主とされる雄略天皇は、5世紀後半の第21代天皇です。歌をよくし、その霊力によって女性や国を獲得したという伝説があります。その雄略天皇について、『古事記』下巻に、次のようなエピソードが載っています。

 長谷朝倉宮(はつせのあさくらのみや)で天下を治めていた雄略天皇は、あるとき三輪山のふもと、美和河(みわがわ)のほとりで洗濯をしている少女に出会います。見目麗しいその少女を、天皇は一目で気に入り「おまえは誰の子か」と尋ねると、少女は恥ずかしそうに「私は引田部の赤猪子(あかいこ)と申します」と答えました。天皇は「おまえは誰にも嫁がずにいなさい。そのうち私が宮中に召すから」と言って、宮に帰っていきました。

 その後、赤猪子は天皇の言葉を信じてお召しを待ちました。しかし、何の音沙汰もないまま、5年、10年、20年、さらに80年もの年月が過ぎてしまいました。若かった体もすっかり痩せ縮まって、顔も見るかげもありません。彼女は、せめて、今日まで待ち続けた誠意だけでも天皇に打ち明けたいと思い、意を決して宮中へ参内します。天皇は彼女のことなどすっかり忘れており、「お前はどこの婆さんだ、何の用で来たのか」と追い返そうとします。

 その薄情な言葉に、赤猪子はすべてを語ります。若かりし日の出逢い、夢のような天皇のお言葉。そして、信じて待ち続けた、気の遠くなるような長い年月を・・・。事情を聞いた天皇はひどく驚かれ、赤猪子を不憫に思って歌と品物を贈ったということです。